LIVE REPORT 3



BIG BAND! Last Updated 2018-08-09


 no.3

ジャズ通のひとから、そうでない人まで
自然と笑顔になってしまうような、そんなライブ。

本田雅人 B.B.STATION
2014.7.19[sat] Blue Note Tokyo
今沢辰彦

 サックスプレイヤー本田雅人のビッグバンド・プロジェクト「B.B.STATION」が1年ぶりにBlue Note Tokyoに登場した。今年の公演は1日2ステージ、2日間のみ。コンサートや野外フェスの日は必ず雨になるという「雨男・本田」のジンクス通り(?)、当日は小雨まじりの天候だったが、ライブを待ちわびた多くのファンが駆けつけて会場は超満員。その熱気で、場内だけは梅雨が明けて真夏になったかのようだった。
 オープニングは「B.B.STATION」のテーマ曲『THEME FOR B.B.S.』。ノリノリでゴリゴリと押していくようなサックスのテーマに、ブラス&リズムセクションのソリッドなパンチが絡むオリジナル曲に、思わずカラダが動き出してしまう。本田のソロはフュージョンとジャズの「カッコいいとこどり」のようなフレーズのオンパレードで、早くも客席のボルテージは最高潮!
 2曲目の『STOP!THE FUNK』、3曲目の『LITTLE LEAGUE STAR』と次々にタイトなリズムでファンク調の楽曲が続く。厚みのある音で粒立ちの良い和音を紡ぎ出すサックス、ハイノート炸裂しまくりのトランペットに呼応するようにトロンボーンが吠える。いずれのセクションも正確なピッチがアンサンブルにスピード感を生み出している。17人からなるバンド全体のノリを支配するように、ひたすらグルーヴし続けるのはリズムセクション。それぞれが縦横に重なり合ってキレの良いサウンドを生み出すさまは圧巻だ。
 バンドを構成する各プレイヤーについては、あらためて触れるまでもないだろう。メンバーリストの豪華なこと! オールスター軍団に配慮するように、ひとりひとりが短いながらもソリストとしてプレイを繰り広げるのも、見どころのひとつ。本田以外のお気に入りプレイヤーを見つけるという楽しみもある。
 好んで演奏するという『サックスのためのソナタ第18番「おはこ」』は、演目の後半にお目見え。サックスセクションをフィーチャーし、アルト、テナー、バリトンそれぞれのプレイヤーが個性あふれるソロを展開したかと思うと、全員でゴージャスな五声和音を会場に響かせる。同じサックスという楽器でも演奏者によって音色やフレージングの差があり、それが複数になることによって表現の可能性が広がることに気付かされた。
 客席のボルテージが高いまま、代表作ともいうべき『MEGALITH』で怒涛のエンディングへ。ギターとアルトサックスがユニゾンで演奏するのも、このバンドならでは。まるでひとつの楽器であるかのように完璧でピッタリ合った音程で奏でられる旋律は、帰り途に口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディーライン。1時間ほどのライブが、あっという間に終わり、心地よい爽快感が残った。
 筆者は本田と同世代のジャズファンである。彼が国立音楽大学時代に学生ビッグバンド・シーンに衝撃的なデビューを飾り、「シャープス&フラッツ」のリードアルト奏者、「T-スクエア」の看板ソリストとしてスターダムに上り詰め、常にトップランナーとして走り続けてきた姿をリアルタイムに体験している。初めて生の本田を見たのは山野ビッグバンド・ジャズ・コンテストで最優秀ソリスト賞を受賞した翌年(1984年)の同コンテスト。たまたま居合わせたステージ脇から目撃し、テクニックはもちろんだがプレイスタイルの斬新さに驚いた。そのせいか、80年代後半に新しい潮流を起こした本田が、次に何をするのかが、つい気になってしまうのだ。このプロジェクト、すなわち「B.B.STATION」を最初に立ち上げてから15年以上がたち、いろいろなことが変化している、というようなことをMCでもサラっと触れていたが、「ジャズ」「フュージョン」「ファンク」などのカテゴリーにとらわれずに、本田の“いま”がギュッと詰まった、そんなライブだったように思えた。
 弊誌『Bigband!』誌のインタビューで、本田はビッグバンドの醍醐味について「わざわざ大勢の人が実際に演奏することでしかできないことがあるから」と語っているが、今回のステージはその発言を見事に具現化したステージであるといえる。ポップでキャッチーなメロディ、スリリングな高速チューンから、しっとりと歌い上げるバラードまで観客を飽きさせない選曲。それを支えるのはハイレベルな演奏技術。この日の「B.B.STATION」は、ビッグバンドのサークルに所属している学生や卒業後の社会人プレイヤー、ジャズやジャズっぽい音楽が好きな人も、さらに言うなら初めてジャズクラブに足を踏み入れた人でさえも自然と笑顔になってしまうような、そんな公演だったに違いない。CDやiTunes音源を聴くのではなく、わざわざ大人数で演奏するライブ感、ここに来ないと聴けない、ここではないと味わうことのできない体験を観客に提供する、というよりも、むしろ観客とともに自身が楽しんでいるようにすら見えたほどだ。この「B.B.STATION」の魅力が「誰もが陽気で明るく、楽しい気分になれること」にあると感じた観客も多いのではないだろうか。
 1年に一度と言わず、もっと頻繁に「B.B.STATION」のライブに行きたいような気もするが、あえて一年待つというのも、楽しみ方のひとつかもしれない。次回公演が今から待ち遠しいのは、その場に居合わせた多くの観客も同じ思いだろう。

Masato Honda & B.B.STATION
Masato Honda(sax)
Eric Miyashiro, Koji Nishimura, Isao Sakuma, Masahiro Kobayashi(tp)
Eijiro Nakagawa, Yuzo Kataoka, Nobuhide Handa, Koichi Nonoshita(tb)
Shuuichi Kuwata, Masakuni Takeno, Kei Suzuki, Takuo Yamamoto(sax)
Shinji Akita(p) Jun Kajiwara(g) Vagabond Suzuki(b) Hiroyuki Noritake(ds)
Set List
1. THEME FOR B.B.S.
2. STOP!THE FUNK
3. LITTLE LEAGUE STAR
4. FAIR AFFECTION
5. CIAO!!!
6. FUNKY MONSTERS
7. サックスのためのソナタ第18番「おはこ」
8. MEGALITH
EC. FADE AWAY

今沢辰彦(いまざわ・たつひこ)
バブル世代のジャズファン。学生時代にはビッグバンドのサークルに所属してアルトサックスを担当。当時好きだったプレイヤーはフィル・ウッズ(ビッグバンドのリードアルト奏者としても多くの録音あり)、最近ではヴァンガード・ジャズ・オーケストラのディック・オーツがお気に入り。

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Photo by Yuka Yamaji


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