LIVE REPORT 6



BIG BAND! Last Updated 2017-12-12


 no.6

“超全力”ボブ・フローレンスを観に行く。

Serendipity18 Tribute to Bob Florence vol.2
2014.9.2[sat] at JZ Brat[東京・渋谷]
喜田太郎

 玉川通りを登りながら、こう考えた。
 ボブ・フローレンスはサックスセクションが1本多い6人編成。合計で18人編成となるわけで、そのサウンドは力強く重厚だろう。フォルテッシモな迫力ある演奏がその魅力なんだろう。しかしながら、ボブ・フローレンスはピアニストだったから、そんな大迫力のなかに印象的なピアノの旋律を響かせるクールさもある。そういえば、ここへ来る前に読んだブログはそんな風にボブ・フローレンスを紹介していたのだった。ブログには、ビッグバンドの「動」とピアノソロの「静」と書いてあって、個人的にはその「静」の方を聴いてみたいと思ったりしていたのだが、今夜のライブのテーマは“超全力”なんである…
 私の考えがここまで漂流してきたときに、私の左足は突然舗石に蹴躓いて、平衡を保つためにすわやと前に飛び出した右足でその仕損じを埋め合わせると、往来のなかでちょうど歌舞伎の大見得を切ったような恰好になって、目の前にそびえるセルリアンタワーをぐっと見上げた。
 今日のライブの会場はこのセルリアンタワーにあるJZ Brat Sound of Tokyoなのだ。
 リーダーでリードトランペットの杉山正(すぎやままさし)のもとで2003年に結成されたバンド「Serendipity18(セレンディピティエイティーン、http://serendipity18.p2.bindsite.jp)」が、ボブ・フローレンスばかりを演奏する「Serendipity18 Tribute to Bob Florence vol.2 “超全力”ボブ・フローレンス」と銘打たれたライブなのだ。
 しかしこの“超全力”とはなんだろうか。ボブ・フローレンスを“超全力”でやっちゃうというのだから、おそらくあの力強く重厚なところを“超全力”しちゃうのだろう。それならこちらも超全力でその演奏を受け止めねばなるまい、と私はやや前のめりになって会場入りしたのだった。
 ライブのフライヤーには、Serendipity18は「パワフルで高いスキルを持ったプレーヤー達」が結集したバンドとある。パワフルなプレーヤーが集まるとなると、いよいよ“超全力”に期待がふくらむ。しかも「アメリカで一流バンドが持っているグローバルスタンダードなサウンド、いわゆるゴージャスでファンシーなサウンドが持ち味」ともあり。ファンシーなサウンドってどういうのだろう、そうか「ファンシー・パンツ」という曲があったがあればネスティコだったな、などと前のめりが空回りし始めたころに、照明が落ちてピアノにスポットがあたった。
 印象的なピアノのソロが流れて1曲目が始まった。曲のテーマを演奏してバンドが会場の空気をゆるがせる。1曲目は名曲「Be Bop Charlie」であった。曲の頂点へ向かって演奏が熱を帯びる。1曲目から全力なんである。MCの「キャラ担当(長堀史)」と「セクシー担当(佐々木大輔)によると、今年4月のライブが「全力ボブ・フローレンス」だったのだが、「足りないじゃあないか」ということで、今回の“超全力”になったという。
 2曲目は「EVIE」でこの曲はエレピが印象的だ。最前列のサックスセクションを見ていると、わっせわっせと楽器を持ち替えているようだ。見たことのない楽器のようにも見える。3曲目「Westlake」の後のサックスセクションのメンバー紹介では、バリトンパートが1本多い6人編成のことが紹介された。持ち替えの楽器はクラリネットやフルートなどのほかにも、バスクラリネットやコントラアルトクラリネットなど珍しい楽器も用意されていた。また、Serendipity18のサックスセクションの配置は、ボブ・フローレンスの後期のスタイルを取り入れたものだという。充実した低音をステレオで響かせることができるのが特徴だとか。
 4曲目は「WITH ALL THE BELLS AND WHISTLES」で、これはソロのないアンサンブル主体の曲である。テーマが次々と変化してゆき、アンサンブルのおもしろさが味わえる。そして第1部はバラード曲の「Autumn」で締めくくられた。振り返って見れば、メロディアスな曲が多く、華麗な演奏だった印象だ。前のめりで固くなっていた身体がほぐれて、気持ちに余裕が出ている。よいものを聴かせていだいた。はてな? ひょっとすると“超全力”を、吹きまくることと思い込んでいたのは私の思い込みだったか。
 ステージの間の休憩時には、プレーヤーが観客席に降りてきて観客にいろいろと声をかけている。サービス精神が豊富なのである。そんなほのぼのした様子を眺めながらライブは第2部へ。
 照明の落ちた会場の2階席にスポットライトがあたり、そこからフリューゲルホルンのソロが流れる。第2部はフリューゲルホルンのソロをたっぷりと聴かせる「Tell Your Story」からスタート。続く「NOBODY'S HUMAN」は勢いのある曲で“超全力”への期待が高まる。トロンボーンのソロを味わわせてくれた「WIDE OPEN SPACES」。そして「Straight, No Chaser」で演奏は“超全力”を登りつめて第2部のクライマックスへ向かった。
 「Straight, No Chaser」の楽譜は、日本国内では初公開の演奏となるそうで、もちろんボブ・フローレンスのアレンジである。ベースのかっこいいソロも“超全力”だった。
 熱気に包まれたまま、曲は「Magic Time」へ。第2部の最後はこのサンバで締めくくられたのだが、“超全力”で熱せられた観客はこれでは終われない。アンコールで演奏されたのがビートルズの「Norwegian Wood」。この楽譜も日本国内では初めて演奏されるものだという。聴き覚えのあるメロディーがボブ・フローレンスに染まり、Serendipity18がそれを“超全力”に仕上げている。拍手は鳴り止まず、アンコールは2曲目の「Carmelo's By The Freeway」へ。“超全力”を締めくくる熱い演奏に観客席からはブラボー!のかけ声も飛び出して、“超全力”なライブの夜は終わったのであった。

 Serendipity18の次のライブは2014年11月7日、エリック・マリエンサル(Eric Marienthal)を迎えてのスペシャルライブとなる。場所はJZ Brat Sound of Tokyo。ご予約・お問い合わせはJZ Brat(http://www.jzbrat.com/)まで。

sax 杉山なつき、David Negrete、八巻綾一、出村道秋、武田和大、Steve Sacks
tb 内田日富、相川 等、西島泰介、堂本雅樹
tp 杉山 正、杉山正明、長堀 史、佐々木大輔、斉藤幹雄
pf 板垣光弘
b 斎藤クジラ誠
ds 八木秀樹
<1st set>
Be Bop Charlie
EVIE
Westlake
WITH ALL THE BELLS AND WHISTLES
Autumn
<2nd set>
Tell Your Story
NOBODY'S HUMAN
WIDE OPEN SPACES
Straight, No Chaser
Magic Time
<アンコール>
Norwegian Wood
Carmelo's By The Freeway

文責:喜田太郎 アマチュアビッグバンドでギターを担当。

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Photo:平澤 保

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