LIVE REPORT 17



BIG BAND! Last Updated 2018-03-10


 no.20

「Jazz in 藝大」と、次世代に向けたメッセージ

ジャズin 藝大2015
ジャズとロックとフュージョンと
2015.07.25[sat] 東京藝術大学 奏楽堂
今沢辰彦

 夏本番、隅田川花火大会と同日の7月25日に、今年も上野の夏の風物詩「Jazz in 藝大」が開催された。 会場は東京藝術大学構内の奏楽堂。世界的な音楽家の公演も行われる、音響技術の粋を極めたホールである。
 記念すべき10回目のコンサートである今回のテーマは「ジャズとロックとフュージョンと」。卒業生 でもあり、かつてライオネル・ハンプトン楽団のコンサートマスター兼リードアルト奏者を務め、現在は母校の客員教授であるMALTAが総合プロデーュスを担当。ギラ・ジルカ(vo)やアンディー・ウルフ(ts)、藝大OBの一流ミュージシャンと現役学生によるビッグバンド「Manto Vivo」の共演が紡ぎ出すサウンドへの期待。 開演を待ちわびる奏楽堂は、そんな期待感で満たされていた。
 オープニングはカウント・ベイシー楽団のナンバー「Fun Time」。ビッグ・バンド・ファンにはおなじみの名盤「Basie Straight Ahead」に収録されている、いわば入門曲で超のつく有名曲。オープニングナンバーに、あえてこの曲を選んだことに、このイベントの意気込み(心意気か?)の強さを感じたが、さらに興味深かったのは、この曲のアレンジ。随所に数小節のテュッティやソロのバッキングが加えられており、原曲のニュアンスを守りながらも新しい「Fun Time 2015」ともいうべき曲に生まれ変わって奏でられた。まさに温故知新、伝統を重んじながら新しさも表現して観客に伝える、というメッセージが込められていたように思えた。
 プログラムはセロニアス・モンクに捧げたMALTAのオリジナル曲「DAZXMANIA」に続き、ロック、フュージョン系のサウンドを得意とするレス・フーパーの楽曲「Make ‘Em Wait」と続く。「ロックとジャズとフュージョンと」というテーマに沿った選曲、レス・フーパー、クインシー・ジョーンズの楽曲のチョイスは、先人たちへのリスペクトが込められて演奏された。第一部のラストはMALTA の大ヒット曲「High Pressure」。ノリノリでサックスを吹きながら、縦横にステージを歩きまわり、ビッグバンドを指揮するMALTA。音楽は頭で聴くものではない、身体で感じるものだと言わんばかりに、エンタテインメントとしてのジャズを全身で表現していた。
 第二部はヴォーカルタイムもあり、ギラ・ジルカがスタンダードを3曲披露。パワフルで美しい歌声が、ゴージャスなビッグバンド・サウンドに乗って一段と輝きを増す。ヴォーカリストのなかでも、華のあるパフォーマンス、その存在感は印象に残った。
 コンサートのハイライトは、MALTAが今年作曲した「Graduate」。教えをしっかり守って学び、次にそれを破り、自分の道を切り開いて離れていかなければいけない、という「守破離(しゅはり)」という考え方をモチーフに作られた新作だ。クリエイター、アーティストとしてスタートラインに立っている藝大の学生たちへの強いメッセージが感じられたアグレッシブな楽曲。そんな思いがバンドに伝わってか、この日一番の喝采が会場に沸き起こった。
 当日の司会も務められた副学長・演奏藝術センター所長の松下功氏が作曲したビッグバンド・ナンバー「Swing MARUNOUCHI」、ビル・ホルマンがベイシー楽団に提供した「The Git」に続きラストの「Jazz Up, Back Up, Dress Up,」でステージと客席の一体感が頂点に。コンサートの選曲と構成、盛り上がりの演出は、さすがエンタテインメントを知り尽くしたMALTAのなせる技。アンコールはおなじみの「Take the A Train」。誰もが手拍子せずにはいられないハッピーな気分になったようだった。
 楽器の演奏技術に関しては超一流のエリート集団。ホーンセクションのテュッティが醸し出す音圧は、なかなか体験できるものではなかったように思う。プログラムの構成もジャズ・ファンならずとも聞き覚えのある名曲を随所にちりばめた、楽しさ溢れるコンサートだった。
 10年目という節目を迎えた「Jazz in 藝大」は、藝大がジャズという音楽をどのように解釈するのか、という期待に十二分に応えるものであったが、そろそろ次のステップに進むべき時がきているように思える。よりオリジナリティ、クリエイティビティの高い藝大発のジャズ、つまり「Jazz from 藝大」を発信してほしいと感じたのは筆者だけではないだろうし、ジャズファンならずとも、そのサウンドに関心を持つ人は多いはずだ。藝大発のJazzという大輪の花火が夏の空を彩る、そんな日が近いうちに来ることを願いながら上野を後にした。
文/今沢辰彦

MALTA( Saxophone・Conductor)
ギラ・ジルカ( Vocal)
アンディー・ウルフ( Saxophone)
三木 成能( Piano)
齋藤 たかし( Drums)
東 佳樹( Drums)
岸 徹至( Bass)
鳥越 啓介 ( Bass) 
布川 俊樹( Guitar)
鈴木 正則( Trumpet)
石川 広行( Trumpet)
飯田 智彦( Trombone)
大石 俊太郎( Saxophone)
Manto Vivo( 東京藝術大学ビッグ・バンド)
Set List
第一部
Fun Time ( Sammy Nestico )
DAZXMANIA ( MALTA )
Make ‘Em Wait ( Les Hooper )
Back In Blue Orleans ( Les Hooper )
Soul Bossa Nova ( Quincy Jones )
High Pressure ( MALTA )
第二部
Rompin’ at the Reno ( Benny Carter )
You’d be so nice to come home to ( Cole Porter )
Summertime ( George Gershwin )
Fly me to the moon ( Bart Howard )
Graduate ( MALTA )
Swing MARUNOUCHI ( Isao Matsushita )
The Git ( Bill Holman )
Jazz Up, Back Up, Dress Up, ( MALTA )
アンコール
Take the A Train ( Billy Strayhorn )

今沢辰彦(いまざわ・たつひこ)
バブル世代のジャズファン。学生時代にはビッグバンドのサークルに所属してアルトサックスを担当。当時好きだったプレイヤーはフィル・ウッズ(ビッグバンドのリードアルト奏者としても多くの録音あり)、最近ではヴァンガード・ジャズ・オーケストラのディック・オーツがお気に入り。

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